日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: C5
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凍結環境にて旺盛な増殖を示す南極産担子菌酵母の環境適応機構
*星野 保藤生 誠一花田 祐一吉田 みどり工藤 栄
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抄録
南極大陸沿岸域は夏季, 露岩が現れコケ類を中心とした陸上生態系が存在する. この生態系には, 凍結環境下で活動可能な菌類が存在すると考え, 探索を行っている. 本発表では得られた菌類の環境適応の解析を目的とした. 菌類の分離は, ポテトデキストロース平板寒天(PDA)に東南極・宗谷海岸露岩地域にて採取した試料を直接接種した後, 凍結(-80℃)させ, -1℃にて培地・接種源の凍結状態を維持したまま培養を行った. 培養の確認された酵母の一部は, 凍結培地上で特徴的な白色霜柱状の凍結状態を保持したコロニーを形成した. ITS・28SrRNA配列の解析により, 分離菌株の最近縁種は担子菌Leucosporidium antarcticumであり, 基準株NBRC 1917T株も凍結状態で同様のコロニー形成を確認した. このコロニーを融解させると粘張性が高く, HPLC分析により, 大量の細胞外多糖の分泌を確認した. 凍結培養時の水溶性成分と未凍結水の動態を確認するため, 食紅を添加したPDAを用い培養を行い, コロニーへ水溶性成分と未凍結水の移動を確認した. さらに, 凍結培養時のコロニー中およびポテトデキストロース液体培地培養時の培地中に担子菌酵母として初めて氷結晶成長を抑制する不凍タンパク質(AFP)の存在を確認した. L. antarcticumの生産するAFPは分子量および免疫学的性質からハラタケ目担子菌から報告されているAFPと高い類似性が認められた. 本菌の分泌する多糖によって凍結環境下においてコロニー・培地間に水溶性成分の濃度勾配を生じ, また, 電子顕微鏡観察により, 毛細環状構造を形成する. これらにより, 水溶性成分の移動が起こり, 細胞外AFPは未凍結水の安定化に寄与すると考えた. 上記の機構により, L. antarctiumは凍結環境に適応するものと推察した.
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© 2009 日本菌学会
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