抄録
菌類は森林生態系における分解者として重要な役割を担っているが、熱帯林に生息する菌類がどのようなリグニン分解活性を持っているのかについてはよく分かっていない。本研究は、沖縄県の亜熱帯常緑広葉樹林で採取した落葉分解菌類を材料として、培養系において滅菌落葉への接種・培養試験を実施することにより、これら菌株のリグニン分解活性を評価することを目的とした。接種試験に用いた菌株と落葉は、沖縄本島北部の琉球大学フィールド科学教育研究センター与那フィールドで採取した。2007年3月から2008年5月の期間、担子菌類(Mycena, Gymnopus, Marasmius, Marasmiellus, Crinipellisなど)と子嚢菌類(Lophodermium, Coccomyces, Xylaria)を採取し、子実体や落葉組織などから計50菌株を分離した。2008年3月に調査地において優占するスダジイとイジュの落葉を採取し、実験に用いた。素寒天培地上にガス滅菌した落葉(300mg)と菌株をおき、20℃で12週間培養し、培養前後の落葉・リグニン・全炭水化物の各重量の差から重量減少率を初期重量に対するパーセントとして求めた。その結果、落葉の重量減少率はスダジイで2.3~34.3_%_、イジュで-0.4~32.0_%_であった。Mycena属菌株がもっとも高い落葉分解力を示した。供試菌株の74_%_、70_%_がスダジイ、イジュそれぞれの落葉において、10_%_以上のリグニン重量減少率を示した。特にMycena, Marasmius, Marasmiellus, Gymnopus, Lophodermiumの各属の菌株において高いリグニン重量減少の値が得られた。本研究課題は平成20年度の(独)農業生物資源研究所ジーンバンク事業の委託事業として実施した。