アンサンブル
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粗視化分子モデリング
4:分子集合体の形態変化の自由エネルギー解析
篠田 渉
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2012 年 14 巻 1 号 p. 51-55

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抄録
粗視化分子モデルを用いた分子シミュレーションにより様々な分子の自己組織化過程を直接観測できるようになるが、生じた自己組織化構造はしばしば準安定の場合もあり、構造の安定性の議論は重要な課題である。本稿ではリン脂質分子の自己組織化構造である脂質膜の形態変化(ベシクルからバイセルへの転移)の自由エネルギー解析を紹介する。得られた自由エネルギー障壁は、連続体弾性理論から予測されたものよりもずっと低いことがわかった。これは連続体理論では脂質膜内部の構造緩和を考慮していないためである。分子シミュレーションから連続体理論で用いられるすべてのパラメータを決定し、自由エネルギーを理論と定量的に比較することで、理論の修正の指針を与えることができるものと考えられる。
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© 2012 分子シミュレーション研究会
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