2013 年 15 巻 1 号 p. 19-27
Protein Data Bank (PDB)に登録されている17,984個の低温下高分解能X線結晶構造について,極性原子周辺の水和水分子分布を調べた.統計学的に十分な数の水和水分子について得られた経験的水和水分子分布は,N-H基,O-H基,C=O基周辺でそれぞれ異なる特徴を示した.また,蛋白質表面での水和水分子自体の水素結合形態についても同様に経験的分布関数を得,正四面体型水素結合形態が蛋白質表面でも保持されていることを確認した.さらに,得られた経験的水和水分子分布関数を用いて,蛋白質親水性表面での水和水分子分布予測を試みた.考案したアルゴリズムを用いて蛋白質複合体界面や膜蛋白質チャネル内部の水和構造を予測した結果,蛋白質相互作用における水和水分子結合位置,蛋白質の構造変化に伴う水和構造変化等に対して実験結果とほぼ一致する予測が可能であった.この様な予測方法は,蛋白質の機能と水和構造との関係を簡単に考察する上で極めて有効なものであると考えられた.