抄録
溶液内化学反応のリアルな描像を捉える手段として第一原理分子動力学計算が活用されている.しかし,計算資源的に高いコストが掛かるために,現状では少数本のトラジェクトリーに基づく議論にならざるを得ず,結果の統計的解釈の是非には慎重な判断が必要となる.そこで注目されているのが第一原理分子動力学計算と最小自由エネルギー探索法を組み合わせた解析手法である.本稿では,最小自由エネルギー探索法の一つであるストリング法を紹介し,ストリング法を溶液内金属触媒反応の典型例であるフェントン反応の機構解明に応用した例を紹介する.