2020 年 22 巻 2 号 p. 142-150
本稿では,密度汎関数法に基づく第一原理計算とBlöchl 電荷解析を用いて,凝縮系で非分極力場を構築する方法論について紹介する.この Blöchl電荷は,分子が孤立系から凝縮系へと溶媒和した時に生じる電荷移動効果と分極効果を効率よく記述することができ,凝縮系の多体効果を平均的に取り込むことができる.そのBlöchl電荷を用いた非分極力場を,室温電解質として有用なイオン液体系の分子動力学計算に適用したところ,エネルギー特性に対する影響は小さいものの,輸送物性の確度が大きく向上した.すなわち,従来の分子力場で報告されていたイオン液体の分子シミュレーションにおける低流動性の課題を系統的に取り除き,イオン伝導率と粘性率を定量的に評価できる分子力場として機能することが分かった.