2021 年 23 巻 2 号 p. 78-87
イオン固有効果,すなわち等しい電荷をもつイオンが溶液物性に異なる影響をもたらすこと,に関しては古くからの膨大な研究がある.所謂Hofmeister 系列と呼ばれるイオン系列をはじめ,様々な状況においてイオン固有効果は顔を出す.その物理的メカニズムは未だに解明されていないことが多いが,イオン-溶媒相互作用,それに伴うイオン間溶媒誘起相互作用が重要な要素である.本稿では,筆者らによる「溶媒自由度を取り入れた連続場理論」を紹介する.そしてそれを用いることで,いくつかのバルクの熱力学量におけるイオン固有効果(イオンサイズ効果) が,排除体積効果と水和(電縮) 効果の競合の結果であるということが,比較的単純に理解できることを示す.