「環境適合型機能性化学品」は,ポリマー系の全原子解析を行う「富岳」成果創出加速プログラムである.ポリマー材料の環境適合化を目指して,MD とQM/MM によるポリマー複合系の相互作用解析を行っている.全原子MD の対象を共重合体に拡張し,水の透過性を規定するポリマーの構造特性を特定するとともに,水の溶解自由エネルギーと拡散係数は共重合種の変化に対して逆相関の関係にあり,前者が水の透過性を支配することを示した.さらに,実験での振動スペクトルを再現可能なレベルでポリマーと水の相互作用をモデリングすることで高分子側鎖の集合構造を明らかにし,また,長時間MD を必要とするポリマー材料中の水分子拡散に対して,短時間の水分子の座標の時系列データから長時間の時系列データを構成する機械学習手法を開発した.有機/無機界面に対するQM/MM 型の大規模シミュレーションおよびプロトン化自由エネルギーの計算を行い,水分による接着・結合の劣化過程を原子分解能で明らかにするとともに,高分子破壊への溶媒効果を大規模MD によって調べ,有機溶媒であるメタノールだけでなく水ですら降伏応力を低下させ破壊を起こりやすくすることを示した.