アンサンブル
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最近の研究から
全原子モデルに立脚したボトムアップ型粗視化モデルを用いたポリマーメルトの粘弾性予測
吉元 健治北畑 雅弘
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2023 年 25 巻 1 号 p. 59-66

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抄録

ポリマーの粘弾性は成形加工プロセスにおいて非常に重要な物性であるが,実験データの集積は特定のポリマー種や測定条件に限られている.そこで,計算による物性データの補完を目標に,ポリマーメルトの粘弾性を定量的に予測するためのマルチスケールシミュレーション技術を新たに構築し,ポリスチレンと Nylon6 を試行対象として粘弾性の予測精度を検証した.まず,ポリマーメルトに対する全原子MD シミュレ ーションを実施して,その結果を基に粗視化モデルと力場を構築した.次に, 粗視化モデルの動的シミュレーション結果から, さらに粗視化を進めたSlip-Spring モデルのパラメータを決定した.最終的には,全原子,粗視化,Slip-Spring 3 つのモデルの動的シミュレーションから算出した応力緩和曲線を繋ぎ合わせてマスターカーブを作成した.これを基に,時間・温度換算則を用いて,高温での計算結果から実用的な温度での溶融粘度及び貯蔵・損失弾性率を求めた結果,実験データと良好に一致した.

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© 2023 分子シミュレーション学会
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