高速原子間力顕微鏡(高速AFM)は,溶液中で生じるナノスケール現象を,サブ秒でリアルタイム撮影できる顕微鏡技術である.元々は,溶液中で機能を発揮するタンパク質を観察することを目的に開発され,生命科学分野でタンパク質の一分子動態解析に貢献してきた.一方で,高速AFM 技術自体の適用範囲は生体試料に限られているわけではないので,溶液中で会合解離する超分子や, 溶液で膨潤する高分子ゲル等の合成分子の構造動態評価に対しても応用されつつある.本稿では,高速AFM の特徴と高分子分野での応用例について概説する.