アンサンブル
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25 巻, 4 号
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特集「高分子ゲル」
  • 眞弓 皓一
    2023 年 25 巻 4 号 p. 270
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー
  • 西澤 佑一朗, 内橋 貴之
    2023 年 25 巻 4 号 p. 271-278
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー

    高速原子間力顕微鏡(高速AFM)は,溶液中で生じるナノスケール現象を,サブ秒でリアルタイム撮影できる顕微鏡技術である.元々は,溶液中で機能を発揮するタンパク質を観察することを目的に開発され,生命科学分野でタンパク質の一分子動態解析に貢献してきた.一方で,高速AFM 技術自体の適用範囲は生体試料に限られているわけではないので,溶液中で会合解離する超分子や, 溶液で膨潤する高分子ゲル等の合成分子の構造動態評価に対しても応用されつつある.本稿では,高速AFM の特徴と高分子分野での応用例について概説する

  • 作道 直幸
    2023 年 25 巻 4 号 p. 279-283
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー

    高分子ゲルは溶媒を保持した高分子網目であり,通常,網目は不均一な構造を持つ.そのため,ミクロな網目構造とマクロな力学特性の関係の理解は不十分であった.しかし,均一で制御可能な網目構造を持つゲルが開発され,ゲルの基礎物理の理解が進んでいる.本稿では,そのようなゲルを用いた最新の実験結果に基づいて,ゲルの弾性率と浸透圧に関する常識に対する以下の問題提起を行う.(i) ゲルの弾性率は,エントロピー弾性を仮定したゴム弾性理論のモデルを借用して説明される.しかし,ゲルには溶媒と高分子の相互作用による「負のエネルギー弾性」が影響するために,従来のゴム弾性理論と異なる.(ii) ゲルの浸透圧は Flory-Huggins 理論を用いて記述されるが,高分子体積分率が低いゲルへの適用は本来不適切である.実際には,準希薄溶液のスケーリング則が実験結果をよく説明する.(iii) ゲルの平衡膨潤状態は調整状態の濃度や弾性率に依存して決まり,平衡膨潤状態における状態量(温度,濃度など)が同一でも,ゲルはマクロに同じ状態にはならない.このことから,de Gennes c*定理は成り立たないことがわかる.

  • 白井 伸宙, 作道 直幸
    2023 年 25 巻 4 号 p. 284-293
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー

    ゲルの弾性は,ゴム弾性と同じくエントロピー弾性によって説明できると長く信じられてきた. しかし,近年実施された系統的な実験により,ゲルにはエントロピー弾性と同じオーダーの負の値を持つエネルギー弾性—負のエネルギー弾性—が存在していることが明らかになった. 負のエネルギー弾性のミクロな起源を探るため,我々は,ゲル中のポリマーネットワークを構成する架橋点間のポリマー鎖に注目し,格子ポリマーモデル(自己回避ウォーク)を用いた解析を行った. 立方格子上のポリマー鎖について,自己回避ウォークのコンフォメーションを 20 ステップまで厳密に数え上げた結果,負のエネルギー弾性はポリマー鎖と溶媒の引力相互作用に由来することが明らかになった. この結果は,負のエネルギー弾性が一部のゲルに限られた性質ではなく,私たちの生活を取り巻くゲルの普遍的な性質であることを示している. 本稿では,数理モデルの定義や途中の計算過程を紙面が許す限り省略せず示し,厳密な数え上げの結果とそこから計算される種々の物理量から負のエネルギー弾性の出現を解析的に示す.

  • 眞弓 皓一
    2023 年 25 巻 4 号 p. 294
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー

    高分子ゲルは,人工血管などの生体・医療材料やソフトエレクトロニクスデバイスなどへの応用が期待されているが,繰り返し変形に対する耐久性を担保するための強靭性に課題があった.本稿では,高分子ゲルの代表的な強靭化手法について解説し,各種強靭化メカニズムを解明する上で分子シミュレーションが適用された例を紹介する.また,近年の動向として,高分子ゲルにおける伸長誘起結晶化を利用した自己補強ゲルの開発についても説明する.

連載
  • ー凝縮系の第一原理計算の方法論についてー
    高橋 英明
    2023 年 25 巻 4 号 p. 299-302
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー

    ハイブリッド型の第一原理分子動力学法(QM/MM 法) を用いる溶液のシミュレーションにおいて,QM 溶質のみならず,その近傍に存在する溶媒分子もQM 分子として記述する方法を拡張型のQM/MM 法とよぶ.QM の溶媒分子が溶質近傍から拡散し,代わりにMM の溶媒分子がその位置に取って代わる現象を防ぐ為の方法としてadaptive 法やconstraint 法がある.筆者らが開発したBCC (Boundary Constraint with Correction) 法は consraint 法の一種である.本稿では,その方法の詳細を解説するとともに,古典力場のみで記述されるモデル系を用いて,それが如何に働くかを示す為の実証計算とその結果を紹介する.

ソフトウェア紹介
  • 志賀 基之, トムセン ボー, 永井 佑紀
    2023 年 25 巻 4 号 p. 303-310
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2024/10/31
    ジャーナル フリー

    並列分子シミュレーションソフトウェア「PIMD」を紹介する.第一原理経路積分分子動力学による水の構造,リングポリマー分子動力学による金属中水素の量子拡散,超伝導体の機械学習ポテンシャル作成とフォノン物性,メタダイナミクスによる多価アルコール脱水反応などの具体例を通じて,その使用方法を解説する.

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