2025 年 32 巻 Supplement 号 p. S115-S122
セラミックスは融点が非常に高く,固相焼結により粉体原料を緻密化するためには1000℃以上の高温の熱処理を要する.焼結工程はエネルギー消費量が大きく,温室効果ガスを大量に排出するため,環境負荷が大きい.焼結過程において,望ましくない粒子の粗大化,初期化学量論比の変化,収縮による形状変化を引き起こし,最終製品の特性に大きな影響を与える.そこで,セラミックスを焼結せずに固化する技術を「無焼成固化法」と称して研究を進めてきた.本手法の重要な点は,粒子表面の機械化学的活性化にあり,具体的にはボールミルにより粒子表面を摩砕処理することで行う.無焼成固化法は,セラミックスと有機材料の機能性を大きく損なうことなく複合化することが可能であることが特徴である.本稿では,無焼成固化法のメカニズムと,その応用例について紹介する.