マイコトキシン
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原著
ラット血管平滑筋細胞A-10におけるエモジンとゲニステインの効果の相互作用の検討
長嶋  等中村 久美子後藤 哲久
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2003 年 53 巻 1 号 p. 19-23

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抄録

エモジンとゲニステインの効果の相互作用を,ラットの血管平滑筋細胞であるA-10を用いて検討した。ゲニステインは細胞増殖を顕著に阻害した.エモジンの単独処理は細胞増殖を阻害したが,ゲニステイン存在下ではエモジンは逆の効果を示した.このことは,エモジンがゲニステインの効果を打ち消したためと考えられた.高濃度のゲニステインへの暴露は,腫瘍壊死因子(TNF)-α誘導性の単球走化性タンパク質(MCP)-1分泌を減少させた.エモジンとゲニステインの同時処理がTNF-α誘導性のMCP-1分泌に与える影響は,エモジン単独処理に比べて強かった.100μMゲニステイン処理によって,メタロプロテイナーゼ組織阻害因子(TIMP)-2分泌がわずかに減少した.また,エモジンとゲニステインの同時処理の結果は,MCP-1分泌と同様の傾向を示した.従って,2つの化学物質のMCP-1とTIMP-2の分泌に与える影響は,相加的であると考えられた.MCP-1とTIMP-2の分泌に関しては,エモジンとゲニステインが同じシグナル伝達経路を共有し,シグナル伝達を強化した結果,相加効果を現していると考えられた.これに対し,エモジンは細胞増殖に対するゲニステインの影響を妨害すると考えられるので,細胞増殖阻害は他の2つの現象とは異なるメカニズムで起こると考えられた.

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© 2003 日本マイコトキシン学会
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