マイコトキシン
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総説
異常気象下における麦類赤カビ病とフザリウム毒素類
一戸 正勝
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2003 年 53 巻 1 号 p. 5-10

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抄録

最近,FAO/WHO 合同食品添加物専門家会議ではフザリウム毒素類のうち,デオキシニバレノールに関して安全性評価がなされ,それを受けた形で,わが国でも小麦のデオキシニバレノールに係わる暫定的な基準値が設定されるにいたっている1).現在,麦類,トウモロコシを含む穀類のデオキシニバレノールやニバレノールの汚染は,主としてFusarium graminearum(テレオモルフ Gibberella zeae)が,穀類の赤カビ病(麦類ではscab,トウモロコシではGibberella ear rot, pink ear rot)の植物病原菌として圃場で多発,被害をもたらすことによって発生することは世界共通の認識となっている.このカビ毒生産菌=植物病原菌の関係は,他のマイコトキシン類の自然汚染とトリコテセン類やゼアラレノンのような赤カビ毒素による自然汚染とを区別して考慮すべき重要な点である.すなわち,腐生性のAspergillusPenicillium の生産するマイコトキシンの汚染が一定のロット内において粒単位の局在性を示すのに対し,赤カビ毒素類では植物病原菌であるために,圃場内の試料に広く分布することになるからである.このことは当然のことながらマイコトキシン類の分析用試料の調製法(サンプリング法)に影響を与える.本稿では,赤カビ毒素の生産菌が植物病原菌であること,赤カビ病の多発が穀類の生育期における気象条件と深く係わっていることを改めて認識することが,今日のデオキシニバレノール規制に対応するにあたって重要な視点であると考え,概説することとした.

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© 2003 日本マイコトキシン学会
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