抄録
ムギ類赤かび病は世界における食糧供給の脅威となっている重要な作物病害である. この病害の主要な病原菌はFusarium graminearum (有性世代 : Gibberella zeae (Schwein.) Petch) で, 病害によって穀類供給量の低下をまねくばかりでなく, デオキシニバレノール (DON) やニバレノール (NIV), ゼアラレノンなどのマイコトキシン汚染を起こすことで食品の安全上, 問題となっている. ここではこの菌の遺伝的多様性, トリコテセン系マイコトキシン生合成遺伝子, 全ゲノム塩基配列の決定に焦点をあて, 近年のゲノム研究で明らかにされてきた知見を紹介する.