マイコトキシン
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55 巻, 1 号
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原著
  • 林 芳樹, 芳澤 宅實
    2005 年 55 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    中国南部 (広西省) の肝癌高発地域及び東南アジア (タイ, インドネシア, フィリピン) 産トウモロコシ99検体のシクロピアゾン酸 (CPA) 汚染を, 新規に考案した分析法により検討したところ, 15検体に (15%) にCPAが検出され, その汚染濃度は27-1510 μg/kgであった. CPAが検出されたすべての検体からアフラトキシンB1 (AFB1) が検出された. 特に, 中国産及びフィリピン産の食用トウモロコシの汚染頻度が高く, 1000 μg/kgを超える濃度のCPAとAFB1の同時汚染であることが注目された.
  • 林 芳樹, セレス・ アンソニー・シー, 芳澤 宅實
    2005 年 55 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    醸造食品製造に使用される国内産市販米麹のシクロピアゾン酸 (CPA) 汚染を, 新規に考案した分析法により検討した. 18都道府県から集めた米麹38検体のうち, 1検体にCPAが検出され, その汚染濃度は480 μg/kgであった. 本米麹から, PDA培地上で白色コロニーまたは黄緑色コロニーを示す2つのタイプの菌がほぼ同率で分離された. これらの両タイプの菌について, 精白米培地を用いた固体培養によりCPA産生性を検討したところ, 黄緑色コロニーのタイプのみがCPAを産生した. これらのことから, 本CPA産生菌が米麹のCPA汚染に関与していることが示唆された.
  • 加賀谷 紀貴, 神吉 昭子, 田川 陽一, 長嶋 等, 川瀬 雅也, 八木 清仁
    2005 年 55 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    エピガロカテキンガレート (EGCG) はラット初代肝細胞においてルブラトキシンB (RB) 誘導アポトーシスに対する保護効果を示した. RBとEGCGで肝細胞を処理し, MAPK・p38とカスパーゼ-3およびー8の発現をRT-PCR法により調べた. RBによりp38が誘導され, RB誘導アポトーシスがp38経路を介することがわかった. 一方, EGCGはRBによるp38の発現誘導を抑えた. カスパーゼ3についても同様の結果が得られた. また, p38を活性化するMKK6についても同様の検討を加えたところ, EGCGによりp38と同じく遺伝子発現が抑えられていた. 本研究により, EGCGはp38経路とカスパーゼの発現に影響を与えることで, RBの毒性より細胞を保護していることが分かった.
  • 加賀谷 紀貴, 神吉 昭子, 田川 陽一, 長嶋 等, 川瀬 雅也, 八木 清仁
    2005 年 55 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    ルブラトキシンBと血清アルブミンの相互作用について調べた. 円二色性スペクトルを用いることで, ルブラトキシンBがアルブミンと相互作用することをアルブミンのコンフォメーション変化として捕らえることができた. また, アルブミン中のトリプトファン残基の蛍光消光より, ルブラトキシンBが低濃度では, アルブミンのトリプトファン残基より遠い位置に吸着され, ルブラトキシンB濃度の上昇に伴い, トリプトファン残基に近い位置にも吸着され始めることがわかった.
  • 伊藤 嘉典, 熊谷 進
    2005 年 55 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    小麦とそれを製粉した小麦粉を一対として, 製粉工場から集めた小麦玄麦80試料および小麦粉80試料, 計160試料について, それらに含まれるデオキシニバレノール (DON) とニバレノール (NIV) を測定し, 製粉工程における毒素減衰について検討した. 試料をアセトニトリル : 水の混液で抽出後, マルチファンクションカラムでクリーンアップ, トリメチルシリル化後, ガスクロマトグラフ質量分析計 (GC-MS, SIMモード) で検出, 定量を行った. その結果, 定量下限値10 ng/g (10 ppb) で全小麦玄麦試料のDONとNIVの各濃度はそれぞれND-2,450 ng/gとND-174 ng/gの範囲であった. 全小麦粉試料のDONとNIVの各濃度はそれぞれND-1,620 ng/gとND-20 ng/gであった. この結果から算出した製粉工程での平均毒素減衰率と範囲はDONで74% (0-97%), NIVで63% (22-91%) であった.
  • 岩下 恵子, 長嶋 等
    2005 年 55 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    毒性学研究のよりよいモデル動物を開発するため, マウスを用いて遺伝的背景や性, 週齢がルブラトキシンBの毒性に与える影響を検討した. ルブラトキシンBによる24時間処理の結果, 肝障害の指標である血清中のアラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) 活性がC3H/HeとBALB/c, DBA/2, C57BL/6で上昇した. その上昇はC3H/Heで最も顕著であった. また, 血糖値もC3H/Heで最も低かった. ルブラトキシンBによる上記バイオマーカーの変化は, 雌より雄で明らかだった. ルブラトキシンBの24時間処理による血清中のALT値の上昇は, 6週齢に比べて9週齢と12週齢のほうが高く, 血糖値に対するルブラトキシンBの影響は9週齢で最も顕著であった. 我々は, 遺伝的背景や性, 週齢がルブラトキシンBの毒性発現に関与すること, そして我々が試した中でC3H/Heの雄の9週齢のマウスが最も感受性が高いこと, を示した. さらに, ルブラトキシンB処理したマウスの肝臓は脂肪肝になっており, 脂肪肝で蓄積される典型的な脂肪である中性脂肪含量はコントロールに比べてルブラトキシンB処理マウスの肝臓で高かった.
第56回学術講演会要約
特別講演
  • 中島 隆
    2005 年 55 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    The provisional standard of 1.1 mg/kg for deoxynivalenol (DON) in wheat was determined by Japanese government in 2002. Therefore, the endpoint in our research must be changed form disease severity to mycotoxin contamination. In this review, I proposed the following strategy for control of Fusarium head blight and mycotoxin contamination.
    i) NIV chemotypes of F. graminearum were widely distributed in western part of Japan in 2002 and the isolation frequency was higher than that of DON chemotypes, and moreover, their virulence would be considerably high. Therefore, control of NIV in addition to DON is needed in Japan at least in the western part, and higher level of FHB resistance should be aimed for in wheat and barley breeding than ever.
    ii) We found that seven chemicals; metoconazole, tebuconazole, captan, thiofanate-methyl, oxine-copper, copper-hydroxide and phosphorous acid would control DON and NIV. On the contrary, treatment of azoxystrobin significantly increased the level of DON and NIV compared to the control plots, even though it reduced disease severity of FHB. These results suggest that new fungicide evaluation system based on efficacy for mycotoxin contamination should be introduced.
    iii) We demonstrated that sieve sorting and gravity sorting were effective to reduce DON and NIV level. In a country elevator, we need more simple ELISA system to check DON and NIV.
    iv) In Japanese wheat production, non-till or minimum tillage is not essential and area of a wheat field is relatively small. Therefore, cultural practice to decrease residue is practical options. We are going to test cultural practices of top soil dressing, burning, up-cut rotary and carry out to decrease the rice residue which is primary inoculum source of Fusarium head blight.
    v) Despite the importance of the disease, there are still unanswered questions concerning the epidemiology and disease spread. How far can the ascospore inoculum be moved from an infected field? How is a genetic diversity of Fusarium graminearum in a field? These information are key for rational management techniques. We investigated spatial distribution of Fusarium head blight and mycotoxin contamination in naturally infested field. The SSR (simple sequence repeats) markers that could clearly and reliably detect DNA polymorphism among Japanese isolates of Fusarium graminearum were developed. Molecular epidemiology using SSR markers could be a new approach.
シンポジウム
  • 小西 良子, 熊谷 進
    2005 年 55 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    赤カビ病に起因する主なカビ毒は, デオキシニバレノール, ニバレノール, T-2トキシンなどのトリコテセン系マイコトキシンとゼアラレノンである. トリコテセン系マイコトトキシンの共通の毒性には, 消化管障害, 免疫毒性などがあり, ガンへのプロモーター作用を示唆する報告もある. 我が国の赤カビ病において最も頻繁に検出されるカビ毒は, デオキシニバレノール, ニバレノールであるが, デオキシニバレノールに関しては2002年に暫定基準値が設定された. その根拠を2つの厚生科学特別研究 (平成13年度および平成14年度) の結果をもとに示した.
  • 青木 孝之
    2005 年 55 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    ムギ類赤かび病原フザリウム属菌の内, F. graminearum種複合体の分類の最近の動向について既に公表された論文等に基づいて解説した. Fusarium graminearum種複合体には以前より, グループ1とグループ2の2つの個体群が知られており, 主にコムギ等のcrown rotを引き起こすグループ1個体群は比較形態学的および分子系統学的解析, さらには交配実験によりホモタリックのグループ2とは別個の種であることが明らかにされ, ヘテロタリックのF. pseudograminearum (有性時代 : Gibberella coronicola) として記載された. グループ2個体群の地理的に多様な菌株についても, 多数の遺伝子領域に基づいて分子系統学的解析が進み, それが異なる系統群から構成されることが明らかにされた. 表現形質ではこれら系統群の識別は困難であり, これまでlineage (系統) 1~9と番号で呼ばれていたが, 最近になり系統7に対応するF. graminearum (狭義) に加えて, 8つの新種が個々の系統群に特異的な遺伝子DNAの塩基配列を基礎として記載された.
  • 須賀 晴久
    2005 年 55 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    ムギ類赤かび病は世界における食糧供給の脅威となっている重要な作物病害である. この病害の主要な病原菌はFusarium graminearum (有性世代 : Gibberella zeae (Schwein.) Petch) で, 病害によって穀類供給量の低下をまねくばかりでなく, デオキシニバレノール (DON) やニバレノール (NIV), ゼアラレノンなどのマイコトキシン汚染を起こすことで食品の安全上, 問題となっている. ここではこの菌の遺伝的多様性, トリコテセン系マイコトキシン生合成遺伝子, 全ゲノム塩基配列の決定に焦点をあて, 近年のゲノム研究で明らかにされてきた知見を紹介する.
  • 上久保 房夫
    2005 年 55 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/05/19
    ジャーナル フリー
    Risk analysis is a framework developed and used in the European Union, USA and international organizations for addressing food safety issues. Codex establishes maximum levels for mycotoxins in foods and codes of practice for prevention and reduction of mycotoxin contamination in agricultural products basing on risk analysis principles. EU countries and USA also manage health risks resulting from mycotoxin contamination using the same principles. In order to ensure the safety of agricultural products consumed in Japan, the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries has introduced risk analysis framework into the preventive control of mycotoxins. Under the risk analysis framework we should base risk management options primarily on risk assessment and scientific data such as myocotoxin surveillance data in agricultural products.
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