抄録
今回,我々はアフラトキシンB1 誘発ラット肝癌K2 細胞に幹様細胞(癌幹細胞)が存在することを明らかにするために,side population(SP)細胞およびstemness 遺伝子発現の解析を試みた.ローダミンを用いたフローサイトメーター解析により,K2 細胞は癌幹細胞であるSP 細胞を約89%と高い割合で含んでいることが明らかとなった.さらに,胚性幹細胞の特徴である多分化能と自己複製能の維持に関与するstemness遺伝子であるsox2, nanog, klf4, Ras ファミリーE-ras およびポリコームファミリー bmi1 遺伝子のK2 細胞での発現レベルを解析したところ,これらの遺伝子は強く発現されていた.一方,成熟肝細胞の特異的マーカー遺伝子であるアルブミンおよびチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の発現は非常に低レベルであった.これらの結果より,K2 細胞はstemness 遺伝子の発現を獲得することにより,典型的な癌幹細胞としての性質を有していると考えられる.