マイコトキシン
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シンポジウム
病原真菌クリプトコックスの遺伝子ターゲッティング効率向上への取り組み
清水 公徳
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2010 年 60 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

酵母から人に至る真核生物では,DNA 二本鎖の損傷は非相同組換え(NHEJ)または相同組換え(HR)により修復される.遺伝子操作による外来遺伝子の導入は,これらの遺伝子修復機能を利用したものである.2004 年,アカパンカビNeurospora crassa において,NHEJを担当するタンパク質をコードする遺伝子を不活化することにより,高効率にHR を引き起こさせる技術が確立された.ヒト病原性酵母Cryptococcus neoformans では,NHEJ によるランダムな組み込みが頻発するため,HR による遺伝子操作が相対的に低頻度でしか起こらず,目的の遺伝子型を持つ組換え体を取得するために数多くの形質転換体をスクリーニングする必要があった.そこで,NHEJ によるDNA 修復の最終ステップに関与するDNA リガーゼIV,またはDNA 切断部分を認識するKU タンパク質をコードする遺伝子群を破壊した株を作出した.これらの破壊株では生育性状や病原性の変化は認められなかったが,いくつかの遺伝子座におけるHR 効率が上昇していることが認められた.

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© 2010 日本マイコトキシン学会
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