マイコトキシン
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トリコテセン生合成経路酵素の進化と毒素生産抑制剤に関する研究
前田 一行
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2018 年 68 巻 2 号 p. 77-82

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抄録

 トリコテセン系かび毒による穀類の汚染や検出漏れリスクの軽減を目指して,トリコテセン類に多様な側鎖修飾をもたらす遺伝的な背景を明らかにするとともに,トリコテセン生産を抑制する化合物の探索と作用機作の解明を試みた.トリコテセン生合成遺伝子の分子遺伝学的な解析により,Fusarium graminearumのトリコテセンC-4水酸化酵素をコードするFgTri13遺伝子はC-7/C-8水酸化酵素をコードするFgTri1と共進化してきたことが明らかになった.その結果,FgTRI13pの基質特異性はF. sporotrichioidesのFsTRI13pと比べて厳密になり,ニバレノール生合成の効率化に貢献していた.また理化学研究所天然化合物バンク所蔵の化合物ライブラリーの中から,トリコテセン生産を抑制する化合物としてグルタミンの類縁体であるアシビシンを選抜した.アシビシンはトリコテセン生産時の細胞内で栄養飢餓を引き起こすことで,トリコテセン主要制御因子をコードするFgTri6の発現を抑制していると考えられた.さらにトリコジエンシンターゼ(FgTRI5p)を標的タンパク質として用いた化合物アレイにより,NPD352を同定した.NPD352はFgTRI5pの混合型阻害剤であり,トリコテセン生産条件下において細胞内のFgTRI5pに直接的に結合することで機能を阻害していると考えられた.

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© 2018 日本マイコトキシン学会
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