日本酒造りの主役は麹菌と清酒酵母であり,麹菌はデンプン糖化,清酒酵母はエタノール発酵が主な役割である.しかし,日本酒造りには見過ごされてきた脇役が存在する.その脇役は蔵付きバクテリアであり,清酒酵母との相互作用によって清酒酵母の役柄に変化を与え,日本酒の味や香りが変化する.主役である清酒酵母は全国で使われているが,蔵付きバクテリアはそれぞれの酒蔵において役割を果たし,酒蔵ごとに役者が違っている.蔵付きバクテリアは清酒酵母の働きを阻害することはない.日本酒造りにおいて清酒酵母と蔵付きバクテリアの相互作用を考慮することによって,これまでになかった新しい日本酒造りが可能になるかもしれない.