マイコトキシン
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小型菌核形成Aspergillus flavus―系統のアフラトレムおよびその関連インドロジテルペン化合物の生産性
田中 敏嗣長谷川 明彦青木 伸實山本 進宇田川 俊一関田 節子原田 正敏野沢 幸平河合 賢一
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1989 年 1989 巻 30 号 p. 19-23

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抄録

著者らはインドネシア産伝承薬のカビおよびaflatoxins(AF)汚染調査について,すでに報告してきた.これらの研究の過程で,Aspergillus flavus分離菌株に関するAF生産性検索結果から,A. flavusに属する3株がAFBばかりでなくAFGグループを多量に生産し,しかもその菌学的性質がいずれも直径300μm前後の小型菌核を多数形成するという非典型株であることを見出した.さらに,Nozawaらはこれらの中の1菌株(IAF-34)について痙攣性マイコトキシンの生産性を研究したところ,既知のA. flavus代謝産物であるaflatrem (ATM), aflavinine (AV), paspalinine (PSLN), dihydroxyaflavinine (DAV)に加え,新規のインドロジテルペン化合物としてmonohydroxyaflavinine (MAV)とmonohydroxyisoaflavinine (MisoAV)を単離し,その化学構造を報告した. 一方,Wicklow, Coleは1982年にA. flavusの菌核中にはAFのほか,痙攣性インドール代謝産物としてcyclopiazonic acid, ATM, DAVが含まれること,またATMとDAVは調査したA. flavusの菌核の85%から検出されることを報告した.さらに上記の痙攣性インドール代謝産物は菌核中にのみ生産され,栄養菌糸や分生子からは検出されないことから,菌核を喰害しようとする土壌中の昆虫類からその侵入を防ぐ毒性物質であるとして, A. flavusの自然界における生活環において, ATM, DAVなどが「菌類が生存していくためのchemical defense systems」の機能を果たしていることを推論した.

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© 日本マイコトキシン学会
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