日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
臨床における倫理問題への取り組み
藤田 みさお赤林 朗
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2012 年 101 巻 7 号 p. 2059-2064

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抄録

同じ医学的事実を共有していたとしても,それを捉える価値観が異なれば,医療従事者や患者・家族の間で治療上の判断が分かれる事態も起こり得る.臨床における倫理問題とは,こうした価値観の対立から生じる治療決定上の問題のことである.当事者間で問題が解決できない場合の方法として,学際的な委員からなる臨床倫理委員会による倫理コンサルテーションが注目されている.こうした体制は国内外で広く普及しつつあり,医療現場でのニーズも高いことが報告されている.ただし,臨床倫理委員会による倫理コンサルテーションを行えば,臨床で生じる問題のすべてが解決されるわけではない.臨床場面での治療決定は患者・家族の人生や生死に関わることさえあり,判断基準は常に明確とは限らず,唯一絶対の正答があるわけでもない.臨床倫理委員会の委員やコンサルタントが,的確に問題に取り組み当事者らを支援できるよう,臨床倫理に関する教育機会を充実させることや,委員・コンサルタント間のネットワークを構築することが今後の課題である.

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© 2012 一般社団法人 日本内科学会
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