日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
腸内細菌叢と内分泌・代謝疾患
入江 潤一郎伊藤 裕
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2014 年 103 巻 11 号 p. 2813-2819

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抄録

ヒトは一人あたり100兆個にも上る腸内細菌と共存しており,その腸内細菌の機能を個体の維持に効率的に利用している.腸内細菌と宿主の関係はこれまで感染症において主に検討がなされてきたが,感染症とはみなされない肥満や糖尿病に対しても腸内細菌が能動的に病態の形成に寄与していることが遺伝学的網羅的検討から近年明らかとなってきた.腸内細菌は腸管内容物の代謝を通じてエネルギー獲得を促進し,また短鎖脂肪酸や胆汁酸などを代謝し,シグナルとして腸管ホルモンや代謝臓器に影響を与えている.腸内細菌は宿主の生存に有利な腸内環境を構築しているが,過剰な栄養下では肥満を助長する.一方,腸内細菌は宿主に慢性炎症を引き起こし,宿主に不利なエネルギー代謝を誘導する.腸内細菌叢を含めた腸内環境の包括的評価,およびその整備が生活習慣病の新たな臨床指標・治療標的となるであろう.

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