2014 年 103 巻 11 号 p. 2820-2828
最も多いDuchenne型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)原因遺伝子ジストロフィンのクローニングを契機として,これまでに様々な筋ジストロフィーの原因遺伝子が同定されている.Disease-modifying therapyの開発が期待されており,現在臨床治験段階にあるエクソン・スキップ治療とリードスルー治療を中心に,将来臨床応用が期待されている分子標的治療の開発の現状について紹介する.福山型筋ジストロフィーは筋と脳を侵す日本に多い常染色体性劣性遺伝性疾患である.我々は原因遺伝子を同定,原因蛋白質をフクチンと命名した.患者ではフクチン遺伝子の3’非翻訳領域にSVA型レトロトランスポゾンの挿入を認めるが,本症がスプライシング異常症であることを見出し,これを制御するアンチセンス核酸を用い,患者細胞およびモデルマウスでの治療に成功した.この治療法は全ての患者に適応となる初の根治療法となる可能性があり,臨床応用を目指す.