2017 年 106 巻 1 号 p. 33-38
日本においては,Helicobacter pylori(H. pylori)感染率の低下に伴い,消化性潰瘍の件数そのものは減少している.その一方で,消化性潰瘍の成因に関して変化が起こっており,かつては消化性潰瘍の大部分を占めていたH. pylori感染による潰瘍は減少し,それに代わって非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)などの薬剤性潰瘍,また,H. pylori感染,NSAIDsによらない特発性潰瘍の割合が増加してくると予想される.H. pylori感染陰性時代には,潰瘍の成因は多様化することが予想され,適切に成因を診断し,それに応じた適切な治療が求められる.