2017 年 106 巻 1 号 p. 23-32
Helicobacter pylori(H. pylori)感染陰性者に発症する胃癌は,H. pyloriの感染と無関係に発症する胃癌であり,全胃癌中1%程度と報告される稀な胃癌である.H. pylori感染陰性者は胃癌の極めて低リスク群である.未分化型腺癌,胃底腺型胃癌がH. pylori陰性者に発生する胃癌の代表的なものである.未分化型腺癌(菅野・中村分類)は印環細胞癌が多く,内視鏡的特徴は褪色調を呈する平坦型の早期胃癌である.胃底腺型胃癌は体部腺領域に発生し,粘膜下腫瘍様の形態を呈する腫瘍である.その他,低異形度分化型腺癌,胃底腺ポリープ由来の癌,自己免疫性胃炎に伴う胃癌,遺伝的な背景の胃癌に,遺伝性びまん性胃癌,家族性大腸ポリポーシスに伴う胃癌がある.H. pylori陰性者の胃癌は極めて稀であるが,最近ではこれらの胃癌が認知され,発見されるようになった.