日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
成長ホルモンから見た脂肪肝/NASHの病態と治療応用
高橋 裕
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2017 年 106 巻 10 号 p. 2254-2258

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抄録

非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)は単純性脂肪肝に,炎症,細胞障害,線維化が加わり,予後不良の進行性疾患である.その成因として,内臓肥満に伴うインスリン抵抗性,脂質異常症,アディポカイン異常,酸化ストレス亢進,ミトコンドリア機能低下,小腸からのエンドトキシン等の複数の要因の集積によって進行するmultiple hit theoryが提唱されている.最近,NASHの成因の一部として内分泌異常が注目されている.中でも成長ホルモン(growth hormone:GH)-IGF(insulin-like growth factor)-1系が重要な役割を果たすことが明らかになった.成人GH分泌不全症においては脂肪肝/NASHの合併頻度が増加し,GH補充療法によって改善する.GHは肝細胞における脂肪合成を抑制するが,IGF-1の新たな作用として,IGF-1が線維化促進の鍵となる肝星細胞の細胞老化を誘導することによって線維化を改善することが明らかになった.IGF-1は動物モデルにおける一般のNASH,肝硬変を改善することから,臨床応用が期待されている.

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© 2017 一般社団法人 日本内科学会
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