日本内科学会雑誌
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VI.高齢者白血病の薬物治療
山内 高弘
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2018 年 107 巻 7 号 p. 1309-1315

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抄録

高齢者白血病の治療は,完治を目標とする若年成人と同一ではない.高齢者急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)の治療は緩和的支持療法,治療強度の弱い治療,完全寛解を目指した強力化学療法に3大別される.患者自身の身体機能,白血病の予後因子,患者・家人の希望,介護等社会的なサポートの有無の4面を考慮し,治療を選択する.寛解導入療法として,シタラビン(またはエノシタビン)+アントラサイクリンが強力化学療法として選択される.非強力治療として少量シタラビンがある.完全寛解到達後は複数回の地固め療法が行われることが多い.高齢者急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)では,若年者同様,オールトランス型レチノイン酸(all-trans retinoic acid:ATRA)と化学療法の併用により治療が行われる.ただし,治療関連死が増加するため,若年者に比し予後は不良である.亜ヒ酸は,初発症例に対して,保険適応除外である.高齢者急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)では,フィラデルフィア染色体陽性例に対して,チロシンキナーゼ阻害薬と化学療法または副腎皮質ステロイドとの併用治療が行われる.陰性例では,伝統的抗腫瘍薬を減量する併用療法が主体となる.イノツズマブオゾガマイシンの臨床効果が今後期待される.

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