日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
早老症の診断と研究の進歩
前澤 善朗竹本 稔横手 幸太郎
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キーワード: Werner症候群, WRN, DNA修復
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2019 年 108 巻 1 号 p. 124-130

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抄録

全身において,実際の年齢よりも早く老化の徴候がみられる疾患は早老症と称され,DNA(deoxyribonucleic acid)修復関連遺伝子や核膜蛋白の異常により惹起される多様な疾患を含んでいる.日本人に多いWerner症候群(Werner syndrome:WS)は,20~30代から低身長や白髪,白内障等が出現し,40代で内臓脂肪蓄積を背景に糖尿病や脂質異常症等を生じ,悪性腫瘍や難治性皮膚潰瘍を高率に合併する疾患である.RecQ型DNAヘリカーゼであるWRN遺伝子の変異による常染色体劣性遺伝疾患であることが判明しており,近年の研究に基づき,診断基準や治療ガイドラインが策定されている.また,原因遺伝子であるWRN蛋白のDNA修復やテロメア維持における役割等,分子レベルの病態解明も進みつつある.超高齢社会を迎えた本邦において,「ヒト老化のモデル疾患」であるWSの研究は,一般老化のメカニズム解明のためにも重要な課題であると考えられる.

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© 2019 一般社団法人 日本内科学会
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