2019 年 108 巻 3 号 p. 582-586
脳細胞は,神経活動を維持するためにも老廃物を効率的に処理する必要性がある.しかし,中枢神経系には解剖学的に同定されたリンパ管は認められず,どのように老廃物を除去しているのかについては十分にはわかっていなかった.近年の研究で,脳脊髄液は,穿通枝動脈の血管周囲腔からアストロサイトが形成した勾配により細胞間隙内に移動し,その後,静脈周囲腔を伝って中枢神経外から排泄されることが明らかになった.この排泄機構は,gliaが介在したリンパ管システムとして,glymphatic systemと呼ばれる.このglymphatic systemは老廃物の処理にも関与する.さらに,glymphatic systemの機能不全がAlzheimer型認知症等の神経変性疾患の発症に深く関わっている可能性がある.glymphatic systemは脳小血管と密接に関連しており,脳血管機能の低下がglymphatic systemの機能低下を引き起こし,Alzheimer型認知症等の神経変性疾患の発症に関連する可能性がある.