2020 年 109 巻 5 号 p. 903-909
近年,感染に伴う腎炎の疫学に大きな変化がみられ,小児期の溶連菌感染後急性糸球体腎炎(poststreptococcal acute glomerulonephritis:PSAGN)が減少し,合併症を伴う高齢者の腎炎が増加してきた.このような症例は,腎炎発症時に感染が終息せず進行中であるため,感染関連糸球体腎炎(infection-related glomerulonephritis:IRGN)と総称されるようになった.IRGNの診断は時に難しく,これは高齢者の不顕性感染症がしばしば把握困難であることに起因する.溶連菌由来の腎炎惹起性因子NAPlr(nephritis-associated plasmin receptor)は,PSAGNのみでなく,各種IRGNで糸球体内に陽性になることから,IRGN全般のマーカーとして診断上の有用性が注目される.