日本内科学会雑誌
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109 巻, 5 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
内科学会NEWS
目次
特集 腎炎診療UP TO DATE
Editorial
トピックス
  • 乳原 善文
    2020 年 109 巻 5 号 p. 881-885
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    腎生検は,腎臓病患者の有する腎障害の成り立ち及び病態を把握し,今後の治療方針に活かすためのゴールドスタンダードの検査であるが,血管の豊富な腎臓から組織を採取するため,常に出血の危険がある.そこで,腎組織の観察から得られる有益性とその危険性とを常に勘案し,適応を判断し,施行する必要がある.各施設のカンファレンス等も通して,個々の患者毎に慎重に判断されるべきである.

  • 金子 修三, 山縣 邦弘
    2020 年 109 巻 5 号 p. 886-895
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    急速進行性糸球体腎炎(rapidly progressive glomerulonephritis:RPGN)は,短期間で急速に腎不全が進行する腎炎症候群である.抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)関連血管炎(ANCA-associated vasculitis:AAV)と抗糸球体基底膜(anti-glomerular basement membrane:GBM)病が代表的な原疾患であり,早期の診断と治療介入が腎予後を決する.AAVの寛解導入または維持療法としてrituximab,AAVと抗GBM病によるRPGNに対して血漿交換療法が保険適用になり,国際標準と同じ治療選択が可能になった.C5a受容体阻害薬が今後,AAVの革新的な治療となるか注目される.

  • 梅田 良祐, 北川 章充, 坪井 直毅
    2020 年 109 巻 5 号 p. 896-902
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    ループス腎炎(lupus nephritis:LN)は,全身性エリテマトーデス患者の生命予後に影響を与える重要な臓器障害である.近年,欧米での標準治療薬が我が国でも承認されたことにより,本邦におけるLN治療の現状は世界標準に近づいたと言える.しかしながら,グルココルチコイドを中止できるほど深い寛解に持っていける症例は少なく,今後は,より正確な診断のもと,多種の薬剤のなかから病期や治療ターゲットに応じて適切な治療を選択する必要がある.このような現状のなか,多彩な病理所見を評価対象とした2018年ISN/RPS(International Society of Nephrology/Renal Pathology Society)改訂分類の提案,さまざまな特異的バイオマーカーの発見ならびに生物学的製剤の開発等により,LN治療がより発展していくことが期待される.また,強皮症においては,腎クリーゼ,それに付随する血栓性微小血管症は,現在も非常に難治性の病態の1つであるが,徐々にその病態が明らかになりつつあり,血管内皮や補体活性化をターゲットとした新たな治療が検討されている.

  • 尾田 高志
    2020 年 109 巻 5 号 p. 903-909
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    近年,感染に伴う腎炎の疫学に大きな変化がみられ,小児期の溶連菌感染後急性糸球体腎炎(poststreptococcal acute glomerulonephritis:PSAGN)が減少し,合併症を伴う高齢者の腎炎が増加してきた.このような症例は,腎炎発症時に感染が終息せず進行中であるため,感染関連糸球体腎炎(infection-related glomerulonephritis:IRGN)と総称されるようになった.IRGNの診断は時に難しく,これは高齢者の不顕性感染症がしばしば把握困難であることに起因する.溶連菌由来の腎炎惹起性因子NAPlr(nephritis-associated plasmin receptor)は,PSAGNのみでなく,各種IRGNで糸球体内に陽性になることから,IRGN全般のマーカーとして診断上の有用性が注目される.

  • 西脇 宏樹, 清水 さやか, 中屋 来哉, 柴垣 有吾, 祖父江 理
    2020 年 109 巻 5 号 p. 910-916
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    膜性腎症は,成人の原発性ネフローゼ症候群で最も頻度の高い疾患である.近年,膜性腎症の抗原として,phospholipase A2 receptor(PLA2R),thrombospondin type-1 domain-containing 7A(THSD7A)ならびにneural epidermal growth factor-like 1(NELL-1)等が報告されており,特にPLA2Rについては,その抗体による新規診断方法等が検討されている.一方で,本邦のPLA2Rの頻度は欧米の報告とは異なることも示唆されている.治療については,2020年に改訂が行われる本邦の診療ガイドラインと2019年に発表されたリツキシマブに関する研究を本稿では紹介する.

  • 川村 哲也
    2020 年 109 巻 5 号 p. 917-925
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    国の指定難病でもあるIgA(immunoglobulin A)腎症の診療で重要なことは,腎生検時の臨床・病理所見をOxford分類と我が国の「IgA腎症診療指針―第3版―」における予後分類に照らし合わせ,個々の症例がいかなる進展リスクを有しているのかを把握し,病態に適合した治療法を選択することである.我が国の多くの観察研究から,扁桃摘出術または扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用がIgA腎症患者の腎予後の改善に有用である可能性が考えられている.

  • 飯島 一誠, 佐古 まゆみ, 野津 寛大
    2020 年 109 巻 5 号 p. 926-932
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    小児特発性ネフローゼ症候群の初期治療は2~3カ月間のステロイド治療で十分であることが明らかになり,難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ治療が開発された.また,ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群や巣状分節性糸球体硬化症の一部は,ポドサイト関連遺伝子の変異により発症することが明らかになり,小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群の疾患感受性遺伝子としてHLA(human leukocyte antigen)-DR/DQが同定された.

  • 新田 孝作
    2020 年 109 巻 5 号 p. 933-938
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    微小変化型ネフローゼ症候群(minimal change nephrotic syndrome:MCNS)は,ステロイドに反応し,長期予後は良好であるが,ステロイド減量と共に再発しやすいのが特徴である.ステロイド依存性で頻回再発型のMCNSに対してリツキシマブ(rituximab:RTX)治療の有効性が示されたが,投与法やモニタリングに関しては,さらなる検討が必要である.ステロイドと免疫抑制薬の併用に抵抗性の巣状分節性糸球体硬化症に対するRTXの適応に関しては,臨床研究の段階にある.

MCQ
シリーズ:診療ガイドラインat a glance
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 木村 通男
    2020 年 109 巻 5 号 p. 974-986
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    今回のAI(artificial intelligence)ブームは通算3回目のものであり,約35年前の前回のブームの際,著者も抗生剤選択支援システムを構築したが,実用にはならなかった.その理由は,データを入れる手間と,その推奨の根拠を示すことができなかったことによる.計算力の圧倒的進歩による今回のブーム到来は,判断するためのルールも自動で調整するという機能が実現している.膨大な候補化学構造とこれまた膨大なタンパク結合部位との組み合わせのうち,可能性の高そうなものを文献情報の意味解釈・シミュレーションによりリストアップすることで,創薬のコストはかなり改善する.しかし,診断結果の理由を問われると,生理学的・薬理学的根拠を示すことは未だ困難なようである.そもそも患者は本当のことを最初から話すであろうか.性感染症や精神疾患の過去の病歴を,それもそのデータは匿名化され,ビッグデータの一部になると言われて.著者が行ったアンケートでも,患者は人間の医師からの説明を好んでいることがわかった.インタビュー能力と説明能力こそは,なかなか機械化されないと考えられる一方で,ガイドラインを頭に叩き込んでそれを適用するという行為は,機械が得意な,取って代わられる可能性のあるものであろう.

  • 中世古 知昭
    2020 年 109 巻 5 号 p. 987-994
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    多発性骨髄腫は,化学療法に対する反応性が不良で,治癒困難な疾患であったが,1990年代以降,自家造血幹細胞移植療法が確立し,さらに2000年代に入り,プロテアソーム阻害薬(proteasome inhibitor:PI)であるボルテゾミブや免疫調整薬(immunomodulatory drugs:IMiDs)であるサリドマイド及びレナリドミド等の新規薬剤が次々と登場し,予後が劇的に改善した.さらに,第2世代のPIであるカルフィルゾミブやイクサゾミブ,IMiDsであるポマリドミドに加え,骨髄腫細胞上に発現するCD38やSLAMF7を標的とするダラツムマブやエロツズマブといった新規抗体薬も登場し,多発性骨髄腫の予後はさらに改善しつつある.また,フローサイトメトリーやPCR(polymerase chain reaction)法,次世代シークエンサーによる微小残存病変(minimal residual disease:MRD)検出法が開発され,MRD陰性化が得られた症例では,生存期間が大幅に延長することが示されている.

  • 永田 真
    2020 年 109 巻 5 号 p. 995-1001
    発行日: 2020/05/10
    公開日: 2021/05/10
    ジャーナル フリー

    アレルゲン免疫療法は,気管支喘息に代表されるアレルギー疾患の病因アレルゲンを皮下注射もしくは舌下投与することにより,生体の免疫応答性を修飾して臨床効果を得る原因療法である.局所ステロイド等の薬物療法とは異なり,アレルギー疾患患者の自然史を修飾する効果を期待して行われる.例えば,本療法により,アレルギー疾患患者で生じる感作アレルゲンの増大現象の抑制,投与薬物の減量ならびに長期予後の改善等の効果がみられる.基本的な適応は,アトピー型喘息,花粉症を含むアレルギー性鼻炎,また,国際的にはハチアレルギーである.我が国においては,標準的手法である皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)の普及が諸外国と比較して遅れていたが,近年の舌下免疫療法(sublingual immunotherapy:SLIT)の登場によってようやく臨床の場で広がりを見せつつある.今後の喫緊の課題として,ハチアレルギーでの保険適用,SLITの喘息への応用ならびに舌下複数製剤の併用法の確立等が列挙される.

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