2020 年 109 巻 6 号 p. 1145-1152
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)の病態解明に基づく新薬開発により,IBD治療の進歩は著しい.特に抗TNF(tumor necrosis factor)-α抗体の出現は,IBD患者治療体系のパラダイムシフトをもたらした.それと共に,治療目標は,臨床症状の改善から内視鏡的粘膜治癒へと変化した.生物学的製剤のみならず,低分子化合物による治療も行われている.しかしながら,IBDと診断された全ての患者がこれら新規薬剤を必ずしも必要としない.臨床医は,IBD治療の基本が従来の治療法を最大限に活用することであることを今一度認識すべきである.