2021 年 110 巻 12 号 p. 2623-2630
真菌は人間の生活環境中に普遍的に存在し,耐熱性のAspergillus属等は,宿主の状態に応じてアレルギーから感染症まで幅広い呼吸器疾患の原因となる.真菌を原因とするアレルギー性呼吸器疾患は,好中球性炎症やステロイド抵抗性の要素を有し,重症難治化しやすい.真菌感作重症喘息やアレルギー性気管支肺真菌症等が代表疾患であり,治療の中心はステロイドホルモンであるが,なかには抗真菌薬が有効な症例も存在する.これらのアレルギー性呼吸器疾患に対して,原因真菌の十分な検索を行わずに漫然と抗真菌薬を投与し続けることは抗真菌薬耐性の誘導にもつながるため慎むべきである.近年,好酸球性重症喘息に使用される抗体製剤は真菌を原因とするアレルギー性呼吸器疾患に対しても高い効果が期待される.今後は,抗真菌薬や抗体製剤をどのような症例に選択するかを判断するための臨床指標が求められる.薬物治療に加えて,環境整備による真菌曝露量の減少も重要な治療戦略となる.