日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
尿細管から見た糖尿病性腎臓病
菅原 翔久米 真司
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2021 年 110 巻 6 号 p. 1178-1183

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抄録

糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease:DKD)は糖尿病の血管合併症の1つであり,典型的な臨床所見としてアルブミン尿を呈する.厳格な血糖管理やレニン・アンジオテンシン系阻害薬を用いた降圧療法等による集学的治療の確立によりアルブミン尿の減少が得られ,DKDの予後は大きく改善してきている.一方で,肥満や高齢化といった,糖尿病患者の臨床背景因子の多様化により,顕性アルブミン尿を伴わずに腎機能低下を来たす患者群の割合が増加するといった変化もみられ始めている.こうした患者群では,糸球体病変に比べて尿細管病変が進行した腎硬化症の特徴が認められる.我が国では,アルブミン尿を伴わずに腎機能低下を呈するDKD症例が今後も増加すると予想され,腎機能低下のfinal common pathwayとしての尿細管病変に対する包括的な病態解明が求められている.本稿では,DKDの病理学的特徴について尿細管の観点から述べると共に,その作用点を尿細管とする治療薬であるSGLT2(sodium glucose cotransporter 2)阻害薬の腎保護機構について最近の知見を交えて概説する.

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