2022 年 111 巻 12 号 p. 2469-2473
リンパ節転移,遠隔転移のない10 mm以下の甲状腺乳頭癌を低リスク微小乳頭癌と呼び,頸部の超音波などの検査の機会の増加からこの微小癌の発見が増加している.さらに検査機会の増加は,その他の甲状腺結節の発見も増加させ,それらに対する細胞診の適応基準が世界的に公表されている.微小癌の過剰診断の解決の方法として,診断時に手術を行わず経過観察する積極的経過観察という新しい取扱い方法が提唱された.その成績から低リスク微小乳頭癌は,大部分の症例はほとんど進行せず,たとえ進行しても手術をすれば,経過観察せず即手術を行った場合と比べ予後が変わらないことから,積極的経過観察は手術が必要な症例を見極める手段とも考えられた.甲状腺微小癌の積極的経過観察という取扱い方法は,現時点では,適切な診療体制の下で行えば,安全で妥当な管理方針であるが,癌を経過観察するということであり,いくつかの留意すべき点がある.