2022 年 111 巻 7 号 p. 1443-1449
薬物性肝障害(drug-induced liver injury:DILI)は実臨床における肝障害の成因として極めて重要であり,鑑別疾患として常に念頭に置く必要がある.被疑薬としては抗菌薬,解熱鎮痛抗炎症薬,精神神経領域薬が多く,漢方薬や健康食品・自然食品によるものも少なくない.近年では抗腫瘍薬や免疫チェックポイント阻害薬によるDILIが注目されている.異常高値を示す肝酵素によって肝細胞障害型,胆汁うっ滞型,混合型に分類される.診断のためには,肝障害を来たしうる他の原因を丁寧に除外すること,原因として疑われる薬物の服薬歴およびその服用時期を詳細に聴取することが重要である.薬物リンパ球刺激試験の結果は参考となるが,確実なものではない.確定診断を目的とした被疑薬の再投与は禁忌である.治療方針としては被疑薬の投与を中止することが大原則で,多くは薬物の中止だけで軽快するが,中には重症化する症例もみられる.患者には今後被疑薬の服用は避けるよう説明する.