日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
診断に対する医療安全的アプローチ―Diagnostic Errorについて
相馬 孝博
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2023 年 112 巻 10 号 p. 1979-1990

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抄録

“Diagnostic Error”は古くから知られており,21世紀に入ってから多くの研究報告がなされるようになった.並行して社会的認知理論の発展により,診断という行為は,人間の頭の中で考えるモデルから,チーム・組織・社会までを含めた広いモデルが提案されている.2015年に全米医学アカデミーは「医療における診断を改善する」報告書を公にして,「a)患者の健康問題について,正確かつ適時な説明ができなかった,またはb)その説明が患者に伝わらなかったこと」と再定義し,将来にわたる各種の政策提言を行った.2020年に医療の質研究庁はメタアナリシス報告書「医療をより安全に」第3版で,エビデンスのある医療安全方策として,臨床判断支援システム,結果通知システム,教育と訓練,ピアレビューを特定した.2022年には非営利団体のリープフロッグが,研修教材などとも連携した,医療現場で利用しやすい29の推奨策を作成した.“Diagnostic Error”は,医師の認知やヒューリスティックな問題にとどまることなく,非常に広範な概念を持ち,個人やチームのみならず,最終的には国家戦略として対応しなければならない重要課題である.

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