日本内科学会雑誌
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I. 診断と治療
2. 細菌
1) 細菌性髄膜炎, 脳膿瘍, 硬膜下膿瘍
山本 悌司
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2006 年 95 巻 7 号 p. 1244-1250

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抄録

細菌性髄膜炎, 脳膿瘍, 硬膜下膿瘍は治療が遅れると致命的であり, その診断治療は緊急である. (1) 細菌性髄膜炎が強く疑われる時は経験的治療 (empiric therapy) を遅滞なく開始する. (2) 髄膜炎症状が明らかでも最近の頭部外傷既往, 免疫抑制, 悪性腫瘍, または頭蓋内腫瘍がある場合, そして欝血乳頭・意識障害などの頭蓋内圧亢進, 神経学的局所所見がある場合, 膿瘍の可能性があるので, CTあるいはMRIをルンバールの前に施行する. この際, 抗生物質治療を画像検査やLPより先に開始する. 経験的抗菌療法は細菌性髄膜炎を疑う場合, 髄液グラム染色や培養結果が判明する前に開始する. 市中感染性髄膜炎では肺炎球菌は最重要であるが, 最近はペニシリン・セファロスポリン耐性菌が存在するため, 小児, 成人とも第3世代セファロスポリン (ceftriaxone, cefotaximeなど) とvancomycinの併用を考慮する. 高齢者, 基礎疾患のある場合は上記でカバーできない細菌による可能性があるため, 薬剤選択を慎重にする. 局所脳症状を呈し, 脳膿瘍, 硬膜下膿瘍が疑われる時は画像検査を優先し, 腰椎穿刺は禁忌である. 迅速な脳外科的対応が必要である.

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© 2006 一般社団法人 日本内科学会
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