2007 年 96 巻 12 号 p. 2812-2818
多くの慢性腎臓病(CKD)には脂質異常症が続発するが,その成因にはアルブミン尿と腎機能低下の要因が複雑に関連する.CKDにおける脂質代謝異常が腎疾患を悪化させるリスクとなることのみならず冠動脈疾患のリスクであることが指摘されている.強力なLDLコレステロール低下薬であるスタチンは腎機能低下を抑制し,タンパク尿を軽減させることがメタ解析で示されている.強力なトリグリセリド低下とHDLコレステロール増加作用を有するフィブラートはタンパク尿を低下させる可能性があるが,腎機能低下症例では排泄が遅延するため慎重に投与すべきである.様々な脂質代謝改善薬の腎機能に対する影響をみたも小規模の臨床研究はあるが,脂質低下療法がどの程度タンパク尿を改善し,どの程度腎機能の保持に寄与するかについては大規模で長期的な介入試験の集積が必要である.