日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
血栓性微小血管障害症による脳神経症状
八木 秀男松本 雅則藤村 吉博
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2007 年 96 巻 2 号 p. 353-362

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抄録

 血栓性微小血管障害症(TMA)とは,細血管障害性溶血性貧血,破壊性血小板減少,細血管内血小板血栓を3主徴とする病態で,神経症状優位とされる血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と腎症状優位とされる溶血性尿毒症症候群(HUS)に大別される.そして前者ではVWFを特異的に切断し,その機能を調節している酵素であるADAMTS13活性が著減するも,後者ではこのような所見は殆ど見られないこと,さらにTMA患者における臨床症状の検討からも同酵素が脳神経症状の発現に関与している可能性が示唆された.そしてその成因としてADAMTS13活性低下により,VWF/血小板血栓が形成され,脳血管障害が引き起こされるものと推測されている.最近,日米の合同研究によりその副作用としてTTPを発症する薬物であるチクロピジンの後継薬であるプロピドグレルではその発症頻度は減少するも,その発症様式はチクロピジンとは異なり,内服開始後二週間以内の早期に発症し,ADAMTS13活性は正常で,血漿交換の有効性が乏しいことが示された.

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© 2007 一般社団法人 日本内科学会
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