抄録
神経学的傍腫瘍症候群は悪性腫瘍が産生する毒素や免疫学的異常により神経系に生じる合併症である.一般的には末梢神経障害が最も多いが,肺小細胞癌や悪性リンパ腫,小児神経芽腫などでは末梢神経障害のほかにさまざまな神経学的異常を呈してくる.傍腫瘍症候群は悪性腫瘍の病勢や進行度とは無関係で,悪性腫瘍を治療しても症状の改善は期待できないことが多い.時に悪性腫瘍が発見される数ヵ月~数年前より神経症状が出現してくることが稀でなく,悪性腫瘍の診断の手がかりともなり,臨床的に重要である.悪性腫瘍と傍腫瘍症候群の詳細な因果関係はいまだ明らかではないが,近年,さまざまな自己抗体の出現が明らかとなり,傍腫瘍症候群の定義も変化しつつある.今後の症例の蓄積による解析が待たれるところである.