日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
医学と医療の最前線
エキノコックス症に関する診断法の進展
伊藤 亮中尾 稔迫 康仁中谷 和宏石川 裕司柳田 哲矢
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 97 巻 8 号 p. 1900-1909

詳細
抄録

エキノコックス症,特に国内で北海道の地方病として知られている多包虫症は,主として肝腫大を伴う難治性の慢性疾患として肝細胞癌その他の疾患との鑑別を要する寄生虫疾患である.多包虫症は北半球で流行し,キツネ,イヌから排泄された虫卵をヒトが誤飲したことによって,早くて数年,通常は10~20年後に発症する.近年,本疾患の臨床検査において画像診断,血清診断,遺伝子診断の技術革新が目覚ましい.血清診断法では,エズリン類似蛋白の遺伝子組換え抗原が検討された結果,特別な経験,特別な施設を必要とせずに,1度の簡便な検査で20分以内に判定結果を出すことができる迅速イムノクロマトキットが旭川医科大学とアドテック(株)により共同開発された.腫瘍マーカーが確認されず,画像診断で多包虫症を疑診した場合にはこの血清検査法を積極的に利用すべきである.患者の検出感度と特異性が非常に高いため,汚染地域の住民検診にも応用可能である.

著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本内科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top