日本内科学会雑誌
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医学と医療の最前線
新たな肺癌の原因遺伝子EML4-ALKの発見と分子標的療法への展開
間野 博行
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2010 年 99 巻 4 号 p. 837-841

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抄録

肺癌はがん死因の第一位を占める予後不良の疾患であり喫煙者に好発するが,その発症メカニズムはほとんど不明のままであった.今回我々は非小細胞肺癌の5%前後の症例において,2番染色体短腕内に微少な逆位が生じ,その結果受容体型チロシンキナーゼALKの細胞内領域が微少管結合タンパクEML4と融合した新しい活性型融合キナーゼEML4-ALKが生じることを発見した.同様な融合型キナーゼであるBCR-ABLの阻害薬STI571が慢性骨髄性白血病に著効することから,EML4-ALK陽性肺癌症例にALK阻害薬が全く新しい分子標的療法になると期待される.実際,EML4-ALKを肺胞上皮特異的に発現するトランスジェニックマウスは生後まもなく肺腺癌を多発発症するが,同マウスにALK阻害薬を投与すると肺癌は速やかに消失した.また我々はALKの新たな融合キナーゼKIF5B-ALKを肺癌において発見しており,ALK特異的阻害薬がこれらALK融合型肺癌症例の共通の治療薬になると期待される.

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© 2010 一般社団法人 日本内科学会
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