日本内科学会雑誌
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筋注鉄剤の鉄代謝に関する研究
第2編 鉄剤注射後の血漿鉄・血漿鉄飽和度並びに副作用に関する考察
服部 理男
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1959 年 48 巻 4 号 p. 608-621

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抄録

鉄剤が人体に投與された際の鉄の處理様式殊に鉄剤受容者側の状態が如何なる影響を鉄剤の處理に及ぼすかについて檢討した. 筋注鉄剤を血清に添加し, その前後で血清不飽和鉄結合能 (UIBC) を測定すると, UIBC値は不変で從つて筋注鉄剤は血清それ自体に対しては安定であり, トランスフェリンに鉄が直接移行する事はない. この事実は又濾紙電気泳動による実驗結果からも推定された. 種々の段階にある貧血患者群及び対照群にデキストラン鉄100mgを靜注し, 鉄剤の處理態度を比較すると, 血漿鉄の消失度は各群共ほゞ同一であるが, 注射後におけるUIBCの減少率は, 各群間に差が認められ貧血の強い群では他の群に比較し, 注射後血清鉄結合能の飽和される傾向が著明に少ない. 又他の各群間にもそれぞれ特徴あるIBCの飽和度の推移が觀察された. 又鉄剤投與時の副作用を報告し, 急性鉄中毒により起こつた副作用である事をUIBC値の完全飽和の事実から推定した.

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