日本内科学会雑誌
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血清トランスアミナーゼ活性値の変動にかんする研究
第2報 肝炎および肝硬変症の副腎皮質ホルモン使用例の観察において
網岡 忠武田 和久氏平 一郎滝谷 泰博
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1962 年 51 巻 3 号 p. 227-236

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抄録

ビールス性肝炎,肝硬変患者の副腎皮質ホルモン使用例について,血清トランスアミナーゼ活性値(GOT, GPT)を長期に亘つて測定観察した結果,副腎皮質ホルモン使用時には,急性肝炎及び慢性肝炎グ鞘炎型ではその半数以上に,血清トランスアミナーゼ活性値の有意の低下が見られたが,これらの症例では使用後早期に再上昇を来たす傾向が見られた.この再上昇を示す割合はグ鞘炎型の慢性肝炎に多く,次いで前硬変,肝硬変の順で急性例には少なかつた.肝硬変症では,血清トランスアミナーゼ活性値及び再上昇する時期も他の例に比してやゝ遅れたが,再上昇を来たした場合,病巣の再燃としての臨床症状,肝組織の変化を伴なう割合は他の例よりもむしろ多かつた.副腎皮質ホルモン使用後のこのような血清トランスアミナーゼ活性値の再上昇は,ステロイドホルモンの蛋白異化作用の直接の影響によると考えられず,病巣の再燃によると考えるのが妥当であつた.この再上昇はステロイドホルモンの消炎効果が顕著であつた例に多く見られたが,そのような症例のその後の肝組織像での惡化は著明でなく,むしろ改善が多く見られた.血清トランスアミナーゼ活性値が,ステロイドホルモン使用後も変動を繰返す症例では,ステーロイドの消炎効果は一時的であり,肝組織の炎症像も使用前に復する傾向を示すものが多かつた.

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