日本内科学会雑誌
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脳生検を行なつたAlzheimer病の1例
三宅 儀鳥塚 莞爾西谷 裕松倉 茂田沢 煕鈴木 敞三好 功峰
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1963 年 52 巻 4 号 p. 323-329

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抄録

Alzheimer病における老人斑の成因は,近年老化現象と関連して注目されているが,なお明らかでない.著者らは脳生検による新鮮資料を用いて種々の酵素組織化学的検素を行なつた.症例は6年前より進行性の痴呆を示す57才の男で,高度の精神荒廃と左上・下肢の筋強剛および軽度の健忘性失語症,構成失行,左右障害を認めた.リコール蛋白分画の異常,脳波の全般性徐波,気脳写による高度の脳萎縮像等がみられた.前頭葉より得た生検資料により多数の嗜銀性老人斑を証明し, Alzheimer病の診断を確認した。しかしAlzheimer原線維変化はみられなかつた.老人斑のあるものはPAS陽性であつた.succinic dehydrogenase及びDPN diaphoraseは老人斑に活性の上昇を示さなかつたが, acid phosphataseは老人斑及びその周辺の小型細胞中に強い活性を示した.これは老人斑の沈澱物に対するmicroglia及び組織球の反応性増生を示唆する.この種の試みとしてはFriedeらに次ぐ第2例目の報告であり, Friedeらの成績と比較し考察を加えた.

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