日本内科学会雑誌
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興味ある経過をたどつた縦隔奇形腫の1例
小沢 真次郎荒井 和彦本間 光夫
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1963 年 52 巻 8 号 p. 946-953

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抄録

胸水貯留を主訴とし, X線像も肋膜炎と酷似せる像を呈したため,長期間内科的治療を受けていた症例に遭遇し,開胸手術で従隔奇形腫であることが判明した1例を告報する.症例は27才男子で,昭和34年12月,突然胸痛および咳嗽發作が起こり, X線検査で右湿性肋膜炎がうたがわれ,胸部穿刺で約500ccの茶褐色液を得た.その後種々の内科的治療は奏効せず,胸水貯留傾向がはなはだしくなり,毎月2000ccも採液出來るようになつた.昭和37年2月入院,当時一般状能は良好で,發熱,咳嗽,喀淡なく,赤沈も正常であつた・胸部穿刺で多量の淡白濁液を得た.比重1006~1010,蛋白含有量0.3~0.35%,細胞成分に乏しく無菌であった.右胸部開胸の結果, 24×14×12cmの巨大嚢腫が発見され,嚢腫壁は極めて菲薄で多量の液を満たし,壁は心嚢,肋膜,横隔膜と癒着していた.嚢腫は茎を有し,前縦隔に連續していた.病理学的検査で嚢腫は三胚葉構成が明らかにされ,嚢腫状奇形腫と判明した.また茎の中に胸腺組織がみられた、本症例は奇形腫でありながら,臨床像特にX線像が湿性肋膜炎と酷似し,診斷困難であつた点が特徴的である.

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