抄録
脳血管障害性病巣の発生および修復の過程に関し,脳の微小循環系の変化を中心とした研究を行なった.研究方法として,イヌを用いて,実験的に脳塞栓を作成し,発生した病巣および周辺における微小循環系の変化を, Evans blue静注法 (Siteegmann)を用いて経時的に観察した.また,脳血管障害上の病巣の血管構築をLaidlow鍍銀法Mahoney変法を用いて観察し,その結果,病巣の発生と微小循環系における血流障害の間には一定の関係があること,出血巣には比較的大きい血管壊死がみられること,ヒトの高血圧性脳出血には漏出性出血が含まれていること,病巣の修復には微小循環系における血流改善が重要な役割を果すことなどの興味ある知見が得られた,また,脳出血の発生機序についても若干の知見と考察を加えた.