抄録
ダイクマロールに対する感受性の個人差の成因究明の目的で,とくに腸内菌叢由来のビタミンKのプロトロンビン合成における役割を検討した.ウサギにダイクマロールを投与することにより惹起された相対的ビタミンK欠乏状態のもとで,大腸菌発育に強い抑制作用を有し,かつ腸管から吸収されにくい抗生物質ネオマイシンを投与しその影響をみた.ダイクマロール単独投与ではウサギのプロトロンビン時間変化は,不変型・回復型・延長型にわかれるが,それ単独投与では変化を示さないネオマイシンを併用すると,すべての例が延長型となる.ダイクマロールに対しては,食餌由来のビタミンKと,腸内菌叢により合成されるビタミンKの総和が拮抗するわけであるが,相対的ビタミンK欠乏状態では,腸内菌叢由来のビタミンKを無視できないこと,またこれがダイクマロールの感受性の個人差や,いわゆるダイクマロール耐性の成因の一つとなりうるであろうことを明らかにした。